口約束で大丈夫?離婚後の生活を守る公正証書

こんにちは、わたべです。

離婚を視野に入れて悩まれているとき、「早くこの苦しい状況から抜け出したい」「話し合うのも疲れてしまった」と、手続きを急ぎたくなるお気持ちはありませんか?
お気持ちはわかりますが、離婚はゴールではなく、あなたの新しい人生のスタートです。焦って後で後悔しないように、じっくり考えて動きたいものです。

今回は、これからの暮らしを前向きに、そして経済的にも安心して歩むためにとても大切な「公正証書」の制度と必要性について、少しお話ししようと思います。

「口約束」や「普通のメモ」に潜む法的なリスク

離婚をするとき、夫婦の間で「養育費は毎月〇万円払う」「財産分与としてこれをもらう」といった約束をされる方は多いと思います。
お互いに納得して、二人で紙に書いてハンコを押していれば、それで一安心、、、本当にそうでしょうか?

残念ながら「口約束」や、お二人だけで書いた「普通の紙のメモ(離婚協議書)」だけでは、将来的にトラブルになってしまうケースが少なくないというのが現状です。

人間の気持ちや生活環境は、月日の流れとともに変わっていくものです。
最初は「ちゃんと払うよ」と言っていた相手も、再婚をして新しい家族ができたり、病気や会社の業績悪化で収入が減ったりすると、だんだんと支払いが滞ってしまうことがあります。

そんなとき、手元にあるのが口約束や普通のメモだけだと、相手に「そんな約束はしていない」「今は生活が苦しいから払えない」と言い逃れされてしまう原因になりかねないのです。
もし相手が支払いを拒否した場合、そのメモを証拠として裁判を起こさなければならず、それには膨大な時間と弁護士費用がかかってしまいます。


一度支払いが止まってしまったお金を個人で回収するのは、精神的にも体力的にも本当に大変な労力がかかるのが現実なのです。

公正証書が持つ「最大の強み」と強力な執行力

そこで、大切な未来を守るための確実な後ろ盾になってくれるのが「公正証書」です。
公正証書とは、夫婦二人で決めた離婚の条件を、公証役場で、公証人が「公文書」として作成するものです。公的な文書になるため、非常に強い証拠能力を持ちます。

この公正証書を作る最大のメリットは、何と言っても「強制執行(差し押さえ)」ができるという点にあります。

一般的な離婚協議書(私文書)の場合、相手が約束を破ったらまず裁判を起こして、そこからようやく差し押さえの手続きに進みます。
しかし、公正証書の中に「もし約束通りにお金を支払わなかった場合は、直ちに強制執行(財産の差し押さえ)を受けても異議ありません」という特別な約束(執行認諾文言といいます)を組み込んでおくと、裁判をしなくても、すぐに相手の財産を差し押さえることができるのです。

差し押さえの対象となるのは、毎月の給料やボーナス、銀行の預貯金、不動産などです。
特に「給料の差し押さえ」は、相手の勤務先に直接通知が行くため、相手にとっては社会的信用にも関わる大きな痛手となります。
そのため、「いざとなったら給料を差し押さえられる」という事実自体が相手に対する強い心理的プレッシャーになり、結果として「滞りなく支払い続けよう」という動機に繋がるのです。

これからの生活を支える大切なお金を守るために、これほど心強い仕組みはありません。

※2026年6月追記:法改正について 2026年4月の民法改正により、公正証書ではない合意書であっても、一定の条件を満たせば家庭裁判所の手続きを通じて迅速に強制執行ができることになりました。法改正後の新しい仕組みや注意点については、こちらの記事→【2026年春の法改正!知っておきたい養育費の守り方】【共同親権とは?法改正で変わる離婚後の子育てのカタチ】で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてくださいね。

公正証書に記載しておくべき重要な「3つの項目」

では、実際に公正証書を作成する際、どのような内容を盛り込んでおくべきなのでしょうか。新しい生活の経済的基盤を作るために、特に重要な項目を解説します。

まず1つ目は、「養育費」に関する詳細な取り決めです。(養育費の対象となるお子様がいらっしゃるご家庭)


毎月の支払額や支払い期日はもちろんのこと、子供が何歳になるまで支払うのか(高校卒業までか、大学卒業までかなど)を明確にします。
さらに、将来子供が進学する際の入学金や、大きな病気をしたときの医療費といった「特別な出費」についても、その都度どう負担し合うかを事前に決めて記載しておくことが、将来のトラブルを防ぐために大事なところとなります。

2つ目は、「財産分与」「慰謝料」です。 婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産(預貯金、家、車など)をどのように分けるのかを具体的に明記します。
もし、どちらかに不貞行為やDVなどの離婚原因がある場合は、慰謝料の金額や支払方法(一括か分割か)についても法的に有効な形で残しておきます。

3つ目は、「年金分割」に関する合意です。 婚姻期間中の厚生年金の報酬比例部分を分割する制度ですが、これも公正証書を作成しておくことで、離婚後に相手方の協力を得ることなく、スムーズに分割手続きを完了させることができます。
老後の生活設計において、非常に重要な項目です。

これらをすべて網羅し、漏れのない公正証書を作ることで、離婚後の「こんなはずじゃなかった」を未然に防ぐことができるのです。

これからの暮らしに、寄り添う安心を

離婚の手続きを進めるのは、精神的にも体力的にも本当にエネルギーがいることです。
早く終わらせたいという一心で、不十分な約束のまま離婚届を出してしまう気持ちもよく分かります。

ですが、ここでしっかりと「公正証書」という形にしておくことは、未来のあなたと、そして大切なお子様の生活を経済的に守ることに直結します。
「あのとき、きちんと決めておいて本当によかった」と、数年後のあなたが笑顔で振り返るためにも、今のがんばりがとても重要になってきます。

法律の手続きと聞くと難しそうで身構えてしまうかもしれませんが、決して一人で抱え込む必要はありません。
一人で進めることに不安があるのなら、専門家に相談するという選択肢もありますよ。

離婚や公正証書に関するお悩みは、遠賀郡芦屋町の行政書士わたべ事務所へ。
皆様の不安に寄り添い、誠実にご支援させていただきます。
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